整備された美しい街並み
その中を縦横無尽に水路が通っていた
「水の都って名前、本当だな」
「綺麗ね」
中心地の繁華街を抜けてフェイト達は島の沿岸部に向かって歩いていた
中華風の景色は面白いものだったが、やはり島を覆う自然には感嘆した
「海、綺麗だな。ゴミひとつない」
ナイロンや空き缶が打ち寄せられていることもなく、白い浜辺は日光に照らされてキラキラと輝いていた
「こちらは人間界ほど自然に無頓着じゃないからね」
「……そうだな」
ディンの言葉にやりきれなさを感じた
黎明との修行中に精霊のことを教わった
精霊とは自然界の意識だという
それらの力を借りて魔法を行使するのなら、自然との対話というのは必須なのだ
しかし、人間界ではそれは無いに等しい
フェイトも今では感じる事ができた
苦笑するような微笑みをこぼした黎明を思い出す
『人間に魔法が使えるもんが少ないわけわかるかぁ?………………人間いうんは傲慢な生き物やねん……精霊なんぞ、気づかんうちに踏みにじれるくらいになぁ』
しばらく散策していると、背の低い岩場に出た
「おっ!」
フェイトは岩場に動く物を見つけて近寄ってみた
濡れない場所に荷物を放って、岩場に乗り上げる
「フェイト!」
「なんかいたんだよ」
波の打ち付ける岩場の影に顔をのぞかせ、フェイトは驚きに瞬く
長年に渡って押し寄せる波で抉られた岩場の向こうには更に空間があった
続いて顔をのぞかせたディンは口笛を吹いた
「人魚の入り江って感じだね」
そこには、色とりどりの鱗を輝かせて楽しげに遊ぶ人魚たちがいた


