その眼差しにはブラッドとフェイトを害そうという色がない
それどころか、フェイトを見下ろす目には慈しみさえ見えた


だから、ブラッドも一応警戒を解いた


「フェイトは眠っているだけだよ。……君はフェイトの友達だね?」

「………そうですが、貴方は?」


注意深く、その男を観察しながらブラッドは問うた
男は静かにブラッドを見つめ返す


「私はゾフィー・クロウリー。フェイトの父親だ」



*******



男は険しく眉間にしわを寄せる
水晶で埋め尽くされた部屋の中、男は青緑の髪をかきあげた


「クラリス……面倒事を持ち込むな……」


重く吐かれた言葉に水晶の向こう側に映るクラリス・アレイスターはゆったりと微笑んだ


「面倒事ばかりではないでしょう?私はちゃんと、貴方の面倒事も引き受けるつもりよ」


男は複雑な思いに眉を寄せてため息をついた
そして、鋭い琥珀の瞳をクラリスに向けた


「……わかった。こちらでも出来るだけ対処しよう。その代わり!キッチリ働いてもらうからな!」


確かに約束を取り付けて、男は一方的にクラリスとの話を切った
すると、すぐに水晶に映るクラリスは消えてしまった


クラリスは終始、人の食えない笑みで相対していた
『身分』は同じはずだが、彼が彼女を苦手とするのはそういったところだった


「まったく……クラリスの奴も面倒な生徒を引き受けたものだ………」


ザッと、ベランダに続くカーテンを開け放つと白い日差しが部屋に万遍無く差し込む
部屋の水晶がそれを弾いて煌めいた


見渡すのは壮麗なる水の都



果てしなく続く青い海
その向こうの空高くに見えるのは、何度見ても呆けてしまいそうなほど壮大な天空の都


男はもう一度、深くため息をついた