学園都市-メディア-


それは1つの島が天空に浮いて形をなしている
偉大な魔法で浮いたソレは異世界の空を少しずつ移動していた


季節はもう冬に突入していた


「アレが『水の都』かぁ」


感嘆の声を自然と漏らしたのはフェイト
学園の時計塔、そこはおそらくメディアで一番高い場所だ


そこからは遥か遠くに見える幻想的な風景が少しずつ迫っていた

紺碧の海に囲まれた島国
その中心にある街は『水の都』と呼ばれる聖域なのだそうだ
遠目にもわかる大きな湖と、幾つもの水域から形をなした街はとても美しい


白い漆喰の壁に濃紺の屋根瓦が島全体に広がる木々と自然と調和をとっている


「スゲー!キレイだな」

「そうだね」


フェイトがやや興奮気味に言った言葉に同意はあったが、それはあからさまに冷めていた
その原因に心当たりのあるフェイトは怒ることも出来ずに苦笑う


「あはは……なんだよ?まだ怒ってんのか」

「当たり前だよ」


ディンは殊更ニッコリと笑った


ことはフェイトとブラッドの失踪事件から始まっていた


2人を探すのに四苦八苦していたディンとベステモーナだったが、あっさりとフェイト達は帰って来たのだ


フェイトは眠ったまま、ブラッドはどことなく憔悴した様子で
まず、教師陣に連れていかれ、そのあとアパートに戻っていた


アンジェリーナの執務室から抜け出したディンとベステモーナはお叱りを受けると思っていたが、不思議な事にフェイトとブラッドが少しの間失踪していた事を誰かに漏らしていないか聞かれ、この事は黙っているように言われただけだった


アパートで目覚めフェイトとブラッドに事情を聞けば2人も首をかしげた
闇の賢者との事はフェイトからあらかた聞いて、その後の事は覚えていなかった


「途中から記憶なくてさ、気付いたらベッド」


ブラッドは余り口を開かなかった
フェイトは多分自分がブラッドを巻き込んでしまったことを怒っていると思っている
しかし、ディンはそんな事で怒っているのではなかった