一呼吸おいて、ゾフィーは箱をいじる黎明に礼を言った
「協力してくれて助かったよ、黎明。ありがとう……」
「堅いこといいなや。空の賢者はん?」
その称号にゾフィーは苦笑いを零す
「まぁ、闇の賢者の城まで空間を繋ぐんは骨が折れましたけどな。……しばらくはもう、わては手をかせへんよ?」
黎明は日本の都を守る役目を負っている
だから、いつでも手を貸せるわけではない
ゾフィーは頷いて、もう一度フェイトを撫でた
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その音は平穏の終わりを告げた
しかし、それは始まりに過ぎない
全ての運命が少年を中心に動き出す…………
少年はまだ知らない
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「ねぇ……ベステモーナ」
どこか冷静に呆れてディンは言った
「何ですか?」
「……君がすごく優秀なのはわかったよ。けどさ、どこまでヤル気?」
2人は今、街中の空き部屋に身をひそめていた
軟禁状態だったベステモーナとディンは部屋を脱出していた
それというのも、2人でアンジェリーナの執務室を物色したところ、脱出に使えそうな魔法書を発見した
それをいとも簡単にベステモーナは使って脱出した
それにはさすがにディンも驚いた
更にベステモーナは拝借した魔法書の中からフェイトとブラッドを探せそうな魔法を次々と物色していた
そして、色々な属性の魔法を一発で発動した
その優秀さに感心するよりも呆れてしまう
魔法を発動してはいるが、未だフェイト達の消息が掴めないのは闇の賢者の魔法によって妨害されているからだ
それを知らないベスは顔をしかめていた
「おかしいですね……手応えはあるのに……こうなったら奥の手もやむを得ないですね……」
ある魔法書をめくりながらベスは呟く
魔法式を使うのが苦手なディンは手持ち無沙汰にしていてソレを見る
(……?……アレって)
訝しんだディンは眉をよせてベスを見た
「黒魔術ってさ、ベスには使えないんじゃないの?」
「……そんなことありませんよ」
しかし、ベスは何ともいえない表情でその魔法書を閉じた