「怒らないで……シエル」
アウロラにとっては、吹き荒れる魔力も気にならない
その魔力が異常な程に大きくとも、彼女が気に掛けるのはそんなことではないからだ
虚ろな目をして座り込む少年のそれはまるでシエルの怒りに感じられたのだ
転がった銀の髪留め
それが不意に浮かび上がる
咄嗟にアウロラは闇の魔力で髪留めの起こした変化を握り潰そうとした
しかし、それは止めることが出来なかった
パキン、パキン
空間がひび割れる
「まさか!?ゾフィー!!」
アウロラから悲鳴にも似た声が漏れる
空間の裂け目から男の手が現れた
虚ろな目をしたままのフェイトを後ろから抱き抱えるように男は完全にその姿を現す
「潮時だ、アウロラ」
初老の男性
しかし、際立った眼光の鋭さに射ぬかれる
アウロラが冷たくにらみ据えた瞬間、音もなく背後からアルドワーズとソルトが肉迫する
2人の抜き放った刄をゾフィーは片手で受け止めた
火花散るギリギリの攻防にゾフィーは眉をひそめた
「主の邪魔……させない」
「おい、オッサン。それ手に入れるの苦労したんだぜ?簡単に……」
魔力が剣に迸る
魔方陣が剣の中で発動した
「持ってかれちゃ困るんだよ!」
弾ける閃光にシールドを張ったゾフィーの手に鮮血が飛ぶ
しかし、顔色一つ変えずゾフィーは声を低くして忠告した
「主を守りたいならここはひくんだ」
瞬間、白い光が放たれた


