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クライ
クライ
檻の中
今考えれば、あんな鉄格子はオモチャみたいなものだった
けれど、それはまるで、自分の全てを否定する証に思えて……手足を縛られたように、動けなかった
『お前は生きていてはいけない』
『お前の存在は災いだ』
『………魔女』
魔女、魔女、災いを呼ぶ
呪われた……魔女!!
呪咀と怨嗟の声は鳴り止まない
けれど、貴方が私の世界を変えたの…………
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「あなたは綺麗よ?」
澄んだ空を映した瞳は、何の臆面もなくそういった
私は汚い、と呟いたら心底不思議そうに彼女は呟いた
「なぜそんな風に言うかな?……あぁ、魔力を持って生まれたから?」
サラサラと流れる清流に布を浸して軽く絞る
それを泥にまみれたアウロラの身体に当てて、丁寧に拭き清めていく
「それは恥ずべきことじゃない。素晴らしい力なのよ?」
「………でも……そのせいでぶたれる……」
最後に顔を拭いて彼女は笑った
「そういう人間もいるね」
どこか、憂いを含んだ瞳
けれど、とてもキレイに笑う人だった
「でも、私と君も人間。それは変えられない。なら、君にひどい事した人達と同じになっちゃ絶対ダメだ」
指先で優しく髪を整えて、その手は包み込むように頬に触れる
その温かさに、眩暈がした
「君の名前は?私はシエル」
「わ…たしは………アウロラ………」
もう、遠い遠い日の記憶


