「ねぇ」


「……何だよ」


魔術の演習授業
簡単な術式をフェイトは試した
今は学園の中庭にいる


基本的な術式は、植物の周りに魔方陣を書いてその植物を成長させるというものだ


地の精霊の力を借りれば良いので本当に簡単なものだ
そこら中で他の生徒は庭に花を咲かせている


しかし


「何でこんなことも出来ないのよ!」

「しるか!」


ベステモーナは盛大に、何回目か分からないため息をついた


「あり得ない、本当にあり得ないわ!」


「何回も言うなよ、誰が一番こたえてると思ってんの?俺だよ、俺!!」



分厚い魔法書を小脇に抱えて、中庭で何度も試したがうんともすんともいわない


「何でなんだ〜!?」


フェイトが頭を抱えたら、何処からか忍び笑いが聞こえた
その気配を探してギラリと降り仰ぐ


「誰だ!今笑ったの!?」


苛立ちがピークに達して、木の上を指差す
笑った不届き者を怒鳴りつけた


「あれ?なんで見つかったんだろ」


陽気なしゃべり方で木の上から現われたのはディンだった
ベステモーナは彼に気付いていなかったのか、驚いたように目を見開いた


「気配上手く消してたと思ったのになぁ」

「詰めが甘いんだよ!てか、何でこんなとこに居るんだよ。お前は魔法術式科じゃないだろ?」



魔法術式科の授業には居なかったし、今彼が手にしているのは魔法書ではなく剣だった


「僕は魔法武術科だからね、今は休憩時間なんだ。それより………」


地面に描かれた魔方陣を見てディンは遠慮なく笑った


「あはははは!すごいね〜、コレはもう才能だよ?学科の違う僕にだってコレくらい出来るよ」

「黙れ!」

「彼の言うとおりだわ」

「ぐっ……」


ベステモーナは冷たく切り捨てる


「ところで、アイスバーン嬢がどうしてフェイトと?」

「彼が不甲斐ないからよ」


何だか何も言えなくなる
ベステモーナは一発で成功させているのだから