ブラッドが逃げないようにか、プレッシャーをかけていたアルドワーズとソルトは今、それを消して静かに控えている


フェイトは目を瞬かせて驚いてはいるが、ブラッドほど今の異常事態を理解してはいないだろう


「……闇の賢者……前に会ったことあったけ?」


と、呑気に言えてしまえるのだから
ブラッドはただ青ざめたが、闇の賢者は少し哀しげにクスリと笑った


「……違う姿でしたし、首刈りの騎士に邪魔されてしまいましたけど」

「首刈りって、アンジェリーナ先生か?なら、あの時会った女の子か!」


あの時とは、第一回クラス対抗戦のことだろう
ブラッド、フェイト、パシィ、レクルの4人は裏門で突如眠ってしまった


その時、冗談混じりに闇の賢者が来たのではないかと話しはしたが、まさか、フェイトが彼女と接触していたとは


しかし、そんなことよりも闇の賢者だと告げられたというのに、フェイトの物怖じしない物言いにハラハラとさせられる


「なんとなく覚えてたけど……ていうか、あの時が初対面だよな?なんで俺に会いたかったわけ??」


フェイトは首をひねったが闇の賢者は不思議そうに言った


「何をいうのシエル?」


フェイトを真っ直ぐ見つめたまま闇の賢者は聞き覚えのない名を口にした


「?……えっと……」

「シエル、約束したでしょう?また逢えるって……ずっと待ってたの、貴方に逢える日を」


さすがのフェイトも困惑の色を隠しきれない
助けを求めるように、チラリとブラッドに視線を寄越すがブラッドも戸惑うばかりだ
ややあって、フェイトは言った


「あのさ……俺はシエルなんて名前じゃない。俺はフェイト・クロウリーだ」