静かに控えた2人の騎士
すぐそばで息を呑むブラッド
抱きつく漆黒の女性
フェイトは取り敢えず言ってみた
「あっあの!ココどこなんだ?」
広い部屋だ
フェイト達のアパートである古風な洋館ではない
窓一つない部屋は六角形の壁に囲まれていて、その一方にもう一つ部屋が続き、それに向かい合わせるように、フェイトの真後ろに鉄の扉が重くそびえていた
「ここは私の部屋よ」
顔を上げた女性と目が合った
闇色の瞳は吸い込まれそうなほど深い
幻のように美しい人だ
「えっと……なんで俺達こんなところに?」
「私の僕(しもべ)に連れてこさせましたの。すごくすごく逢いたかったんですのよ?なのにクラリスったら邪魔ばかりして……」
どこか子供じみた口調で逢いたかったと繰り返す
そして、クラリスとはメディアの校長の名前ではなかったか?
「……貴女は誰だ?」
女性はなぜか綺麗な形の眉を寄せて、本当に悲しそうに顔を歪めた
「………忘れてしまったの?………私はアウロラ、闇の賢者アウロラですわ」
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闇の賢者
その存在はとても有名だ
特に闇属性の種族であるバンパイアの間では知らないものはいない
人間にして、他を圧倒する魔力で夜の闇を支配する女王
人嫌いで忠実な部下しか傍に置かず、外を出歩くことは滅多にない
たまに外に出れば、立ち寄った場所では姿を見られないように街全体に眠りの魔法をかける
そうしてひっそりと暮らし、美しいとまことしやかに言われる姿を見せることはない
しかし、今、ブラッドの目の前には闇の賢者がいる
確かに目を奪われる美貌の持ち主だ
20代後半程に見えるが実際は5百年は生きていると聞いたことがある
魔力を多く宿したものは身体の寿命も長い


