魔法学園‐メディア‐




ブラッドは夜の散歩から帰って来たところで立ち止まる
アパートの前、ちょうど出てきた人影に気まずさを覚えたからだ


フェイトはいつもどおり変わらず話し掛けてくる
ディンが何か話したようだが、それでもフェイトは変わらない

まだどのように話せば良いかわからず立ち止まったが、ブラッドは訝しげにフェイトを見た


もう日付が変わろうかという時刻、肌寒い夜半に上着も着ていない


ただ前を見るどこか虚ろな瞳、よく見ればフェイトは裸足だ

どこかへ行こうとするフェイトに駆け寄ってその肩を掴んだ


「おい!」


振り向いたフェイトの瞳はブラッドを映していなかった


ブラッドが息を飲んだその時、闇の使いは舞い降りた


「ワーズのバカ……見られた」

「うわぁ……めんどくさいな。ていうかバカって言うな!」


くすんだ灰色の髪、青灰色の甘く垂れた瞳
全身黒いコートと銀の装飾


一度見れば忘れられない出で立ちの2人組
ブラッドとフェイトを取り囲むように、前方と後方に降り立つ
ブラッドは瞠目した


「お前、誰?こんなところに居合わせるなんてタイミングの悪い奴だな」

「………殺してく?」


とんでもないことをさりげなく無表情に言ったソルトにブラッドは硬直する
反撃しようにも、向かい合っただけでわかる力の差に身体は強張るだげだった


張り詰めた空気にかまわず笑ったのはアルドワーズ


「早まんなって、ソルト。それじゃ後が面倒だ。今はここの客人だぜ?俺達」

「じゃあ……一緒に行こうか」


2人は腰に帯びた2本の剣のうち短い短剣を引き抜く

フェイトを庇うようにブラッドは背に隠す
フェイト変わらず意識が定まっていない


ニッとアルドワーズは笑った


「さっさとヤッちまおう。主がお待ちかねだ」



2人は同時に短剣を地面に突き立てた