「あぁ、リーバの家は日本にあるから。バンパイアは色々な所にいるんだよ」
「……マジかよ」
日本ということは、こちらの異次元でなく人間界にいるということだ
フェイトがいた国でも普通にすれ違っていた人がバンパイアだった可能性がある
そう思うと不思議な感じだ
そう思っていると、不意にフェイトは振り向く
「………?」
「どうしたの?」
立ち止まったフェイトにディンは訝しんで聞く
ベスも不思議そうにフェイトを見た
振り向いた先には特にいつもと変わらない街並みがあるだけだ
「フェイト?」
「……いや……誰かに呼ばれた気がして」
「誰の声も聞こえなかったけど?」
ディンの言葉に曖昧に頷いて、フェイトはまた歩きだした
道に立ち並ぶ街灯に止まった一羽のカラスが黒い羽をばたつかせ、一つ鳴いた
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声が聞こえる
少女の声だ
いつだったか囁いた言葉がようやく聞こえそうな気がした
トン、と軽い感触がして振り向く
背中から抱きつかれたのだ
これと同じ夢は何度か見た
また、漆黒の少女がそこに居た
少女が微笑む気配がする
いつもと違うのは、その少女の切ない囁きが聞こえたこと
「やっと逢えましたわ……シエル……」
フェイトは違うよ、と答えた
俺はシエルじゃないと、答えた


