ウィリスは民族衣装の一部、肩にかけたゆったりとしたマントをつかんで広げる
それはフワリと浮き上がり、演習場いっぱいにその面積を広げた
呆然とする生徒と違い、彼は教師だ
いつまでも驚いているわけにはいかない
マントが端から端まで広がり、ピンと伸び上がったところで上空から2人は落ちてきた
「「うわぁ!?」」
ボフン、と音を立ててマントの上に落ちた2人を包むようにしてマントは縮んだ
マントから這い出るように出てきたフェイトは首をかしげた
「アタタタ……やっちまった……」
「おい!フェイト〜!」
もぞりとヴォルフも這い出てフェイトの胸ぐらを掴んだ
「ぁあ……わりぃ……失敗したんだよ……ハハハハ」
苦笑いで誤魔化そうとしたフェイトにヴォルフは意外な反応を示した
「お前スゲーな!」
「……は?」
「今のスゴかったぞ!あんなデカい初級魔法見たことねぇや」
純粋に目を輝かせているヴォルフにフェイトはむずがゆくなりながらも笑った
「おっ、おう!俺も初めてやったけどな、力加減が難しかったぜ」
少し照れたように頬を染めて、フェイトは汚れた鼻先を拭った
それを離れた場所で見ていたカラスが一羽、バサリと羽ばたいた
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「スゲーなぁ」
メディアの客室
そのゆったりとしたソファーにダラリと寝そべり、アルドワーズは呟いた
無造作にくすんだ灰色の髪を掻き上げる
「……ワーズ……覗き?」
「変な言い方すんなよ!ちょっと目標がどんなもんか見てたんだよ」
一羽のカラスを使い魔として、そのカラスが見たものをアルドワーズは直接見ていた
ソルトは興味なさげに首をかしげた
「ふーん……そんなに面白いかな」
「ああ、なかなか笑わせてくれる」
青灰色の垂れた瞳に危険な光を灯してもう一つ呟く
「そろそろ動くか?」
ソルトはそれに無言で頷いた


