ブラッドはその秀麗な顔に苛立ちを滲ませてため息をついた
人間以外の血でも食事にはなるが、味は全く違う
純粋な人間の血ほど食欲をそそる香はない
その根源がこんなに近くにいる
双子の弟はヘラヘラと笑っている
それを見ていると不安しか込み上げてはこない
この軽薄な弟が一族の禁を犯してしまわないか心配で仕方なかった
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何はともあれ学園生活は始まった
なんとか昨日の内に荷物を整理して眠りについた
フェイトの学科は魔法術式科だ
他にも
魔法薬学科、魔法武術科などがある
西洋風の城を模した校舎は広い
授業のある教室を探し当ててフェイトはそこに飛び込んだ
「セーフ!」
広い教室、黒板を中心に扇状に広がっている席は下から階段式に高くなっている
開始のチャイムが響いて、フェイトは慌てて開いている席に座った
しかし、やはり意味ありげな視線を感じる
(絶対昨日の犬のせいだ)
心のなかで狼少年、ヴォルフ・シュタインの呼び名が決まったところで隣に誰かが座って来た
「ゲッ!」
「おはようございますフェイト・クロウリー。ゲッとはなんですか?」
さらさらとした黄緑色に見える長い髪、尖った長い耳
気の強そうな青い目は不躾ほどフェイトを真っ直ぐ見ている
「何で隣に座るんだよ!」
「私はクラス対抗戦で勝ちたいの。そのために貴方には強くなってもらわなくてはいけないわ」
高慢にも聞こえる言い方に唖然として言い返す
「そんなのお前の都合だろ?それとお前が俺の隣に座る意味が分からない」
「お前じゃないわ、ベステモーナよ。そんなの決まってるわ。授業は私が貴方に付きっきりで、術式を教えてあげる」
自信たっぷりな彼女の笑みには不可能という文字はなさそうだ
「魔力を込めることもまともに出来ないなんて致命的よ?足を引っ張らない程度に魔術が使えるようみっちり教えてあげる」
今度こそフェイトは言葉をなくした


