「走るアヒル 追うのはウサギ」
フワリと足が浮かぶ
ヴォルフの武器は自身の爪
ソレがフェイトの眼前に突き付けられたその時、ヴォルフの爪は空をかく
「なっ!?」
本能的にとっさに上を向けば、不格好に宙に浮かぶフェイトが見える
今のは初歩的な浮遊魔法だったはずだか、それにしては高く飛びすぎている
身体能力の高いヴォルフでもあの高さまでは追い掛けていけない
ヴォルフの手の届かない空中で緩やかに停滞、いや落下してくるフェイトを見て背筋があわだつ
ゾクゾクとした快感にも似た感覚は狩りをする時と同じだ
「百夜の月 狩るのは鷹 兎はその牙をさらすことはなく伏す」
ヴォルフのスペルで魔法が発動する
しかし、それと同時に空中でフェイトも魔法を発動させていた
ヴォルフの爪から放たれた白い斬撃をかわすため、フェイトは必死で宙を蹴る
「風の精霊 シルフィーの祝福!」
初歩的な風の魔法
しかし、フェイトの発動した術式の規模に驚愕の声が上がる
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黎明は言った
座禅を組んだフェイトは、もう何時間か知れない魔力の練りこみをしていた
「魔力の流れを感じるんや。全身、足の先から爪の先まで、気を抜いたらあかん」
まずは自分の魔力を操るすべを教えられる
精霊を感じろ、とも黎明は言った
指先で簡単に小さな風を起こして、木の葉をクルクルと弄ぶ
「精霊ゆうんわ、それに見合った魔力をもっとるもんに力を貸すんや」


