本当に馬鹿だと思う……
どこか冷めた気持ちでディンは演習場に立つフェイトを見た
怖くはないかと聞いて、なぜ笑えるのだろう
目の前にいるのは、人間1人の命くらい簡単に奪ってしまえる存在なのに
『アホ、今更だろうが。俺にはおまえらの方が怖がってるように見えるぞ』
誰が?
怖がらなくちゃいけないのはお前の方だ……
『今度避けたら絶交な?』
そういったフェイトを心底馬鹿だと思う反面、その言葉の意味に安堵した自分がいる
それを思うと、冷めた……冷めさせた感情が、沸騰したような感覚に襲われる
『友達』と呼ぶものなんて持ったことなどないが、今更ボクとキミは友達だよ、と確認しあわなければ分からない歳でもない
結論
馬鹿な奴から離れられない奴も十分馬鹿だということだ………ベステモーナも含めて
「それでは、始め!」
ウィリス先生の合図で第2回戦が始まった
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いったんフェイトは飛び退く
それを見たヴォルフの琥珀色の目に獰猛な光が走る
獲物を狙う獣の目だ
迫ろうと裸足のヴォルフが地面を踏みしめた
フェイトに向かって飛び出して来ようとするヴォルフが迫る前に、フェイトは両手のひらを合わせて詠唱する
監督のため演習場内にいたウィリスはそれを聞いて驚く
魔方陣を描いた様子もないのに、いきなり詠唱しても魔法は失敗してしまう
可哀想だが、これまでの授業でフェイトを見ていた感じでは到底、詠唱魔法を成功させられるとは思えない
しかし、ウィリスは次に目の前で起こった光景に瞠目した


