落胆にも似たような含み笑いで言ったディンの言葉に、フェイトはため息をついて言った
どこか呆れたように目をすがめて
「アホ、今更だろうが。俺にはおまえらの方が怖がってるように見えるぞ」
声の調子はどこか弾んでいて、ディンは目を丸くする
「今度避けたら絶交な?」
事も何げに言ってニッと笑ったフェイト
ディンは眉間にしわをよせて、不貞腐れたように呟く
「………フェイトは馬鹿だよ」
「なんだと!?」
その時、対戦開始の合図が落とされた
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合図とともに剣を構えたブラッドはベスに一気に迫る
ブラッドは馬鹿ではない
冷静に考えれば魔力、魔法のセンスではベステモーナには適わないことがわかる
ならば、距離を取って相手の出方を待つよりも接近戦に持ち込まなければ勝機はない
迫ったブラッドに何事か呟いたベスは手をかざす
剣を振りかざしたブラッドはベスの頭上で剣を止める
いや、止められたのだ
ベスの手と剣の間に魔方陣が浮かび上がり、刄をを捕える
すぐさまブラッドは剣を魔方陣から離し、片足を軸にベスの脇腹目がけて剣を突き立てる
すかさずベスももう片方の手を交差させて迫った刄を受けとめる
ジリジリと魔方陣を削るように、ブラッドは剣に込める魔力を強めた
2人は同時に地面を蹴って距離を取る
「風の瞬き 星は流れる」
「闇の主従 月のない夜 魔物は呻く」
唱え終わったのはベスが先
何も持たない手を弓を引くように構える
すると薄黄緑の光が集まり大きな弓矢の形を成した


