ぐるりと演習場を囲む石段は、どこかコロセウムね作りに似ている
フェイトが座った石段のすぐ隣に腰を下ろして声をかけたのはディンだった
へらへらと笑う顔はいつもと変わらないが、その紅い瞳だけはどこかフェイトを探るように細められている
フェイトはその目を真っすぐに見返してから俯いて、冷たく言った
「なんだよ?もうお前は話し掛けてこないかと思ってた」
思っていたよりも突き放すように言ってしまったフェイトは顔をしかめる
「ごめん」
真摯な声でディンは素直に詫びた
フェイトはパッと顔を上げてディンを見た
「謝るくらいならなんで……俺を避けるんだよ、お前もブラッドも」
少しの沈黙があって、ディンは眉をさげて笑った
「フェイトに見せたくなかったから」
「……何をだよ」
「コレ」
言って、ディンはきっちりと留めたカッターシャツのボタンを外していく
ネクタイを緩めて現れた首筋には小さな傷痕が2つ
何かに噛まれたようなそれに一瞬考えてフェイトはあっ、と声を上げる
「………ブラッドか?」
「違うよ、リーバ。怪我してたでしょ?ソレが思ってたよりも深くてね。だからあげたんだ」
何を、とはディンは言わなかった
けれど、フェイトにも察しがつく
……血をあげたのだ
噛まれた跡を見るフェイトの目をディンは読めない色の瞳で覗きこんだ
「怖い?」


