ベスは気配を感じて駆け足で廊下に出た
中央ロビーに降りるための階段の手すりから身を乗り出して目的の人物を視界に捕える
「フェイト!」
「……よう、ベス」
力なく笑ったフェイトの憔悴ぶりにベスは目を見開く
鼻先の絆創膏
擦り傷は身体中にある
どことなくやつれているのは気のせいではなかった
なんと言ってよいか分からないベスは少し迷ってから、全てが詰まった言葉を呟いた
「………何があったんです?」
*******
ロビーのソファーに腰をおろしたフェイトはフッと笑って語り始めた
「何が凄かったって……そりゃあ、あの人の鬼畜さだった……」
フェイトは特別講義だと言われて連れて来られた黎明の異空間に1週間、ずっと閉じ込められていた
その間、ほとんど休みなく魔法の使い方を教えられた
それは、かなりスパルタだった……
フェイトが気絶すれば冷水をぶっかけ「まだノルマは終わってへんで?」と笑って見下ろされた
弱音を吐いたフェイトに向けられた冷笑が忘れられない
「……壮絶でしたね」
「俺は何かを越えた気がするぜ……」
疲れ果てた虚ろな瞳はどこか遠くを見ていた
白い灰のようになってしまったフェイトをこれ以上は問い詰めることが出来ない
「……仕方ありませんね、今日はゆっくり休んでください。あっそうだ、私が軽い食事でも用意しましょうか?」
「いえ!結構です!!」
気をきかせたつもりで微笑んだベスは間髪入れずに返答したフェイトに目を丸くした