「そうです!フェイトはどこですか!?」


ベスはスゴい剣幕で肩を掴んで揺さ振って来た


「ちょっ!ちょっと!なになに!?」

「フェイトはどこです!?」


詰め寄るベスに目を白黒させる


「あのさぁ……その猪突猛進さは直した方がいいよ」


ため息をついたリーバは少しベスと距離を取ってから目をすがめた


「フェイトはもうメディアにいない」

「え?」

「お師匠……安部の黎明様は時空間魔法の天才だから、今ごろ黎明様の作った異空間にいると思うよ。例の特別講義でもしてるんじゃない?」


ベスは肩を落として途方に暮れる
とりあえず、フェイトに会いたかった


無意味でも、問いただしたかった


貴方は何なのか?
いったい、誰に狙われていると言うのか



逸る鼓動はおさまってはくれなかった



*******



そっと、頬を撫でる暖かい手を覚えている

誰のモノかはわからない


ただ、懐かしい


微笑む気配がして、フェイトはなぜか嬉しくなった


目を開けた……気がする


蒼い空がどこまでも広がり、地平線さえ見えない
夢の中のように淡い視界に濃い栗色の髪をした女性が立っている


後ろ姿のその人
顔が見たくて手を伸ばした


トン、と背中に突然軽い感触が触れる


振り返れば漆黒があった



『-----------』



漆黒の少女は何事か囁いた
けれど、やはりその声は聞こえない


グイッと腕を掴まれ、さらに振り返れば、あの女性でなく黎明がそこに居た


人間の姿、漆黒の髪がサラリと流れた


「それに答えたらあかんで」


黒い瞳と目が合って、ズルリと漆黒の少女から引き剥がされた