普通の女性だった
特別美人でも、とびきり可愛いわけでもなかった
不細工なわけでもなかったが、どこにでも居そうな普通の女性だった
けれど、その女性は他を隔絶する力を持っていた
圧倒的な魔法のセンス
彼女にできないことはないと、若い頃の自分はそう思っていた
『そんなことないのに』
彼女が笑うと華やぐように周りは和んだ
『黎明は変なことをいうね。私にだって叶わないことくらいあるよ』
それは何かと問えば、深い蒼天の瞳は真っすぐに黎明を見た
『ナイショ』
暖かい人
けれど、どこか子供のようにあどけない人
『ズルいやないか、シエル』
ふわりと、彼女は笑った
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黎明は生徒を集めさせ、適性を測る術(魔法)を使った
配った木の葉が消えれば適性はない
木の葉が燃えたら……適性があるということだ
かつて日本で教えたリーバという少年は適性があった
しかし、内在魔力はあまりなかった
ゆえに物を別の場所に移動させるだけのことしか出来なかった
黎明は木の葉を燃やした少年を見て、内心驚いていた
(……シエルにそっくりな目をしとる……)
呪い(まじない)の効果でフェイトを隅々まで調べて分かった
誰かに封じられた魔力
この少年を守る為の封印であることがわかる
しかし、それはもう瓦解寸前の砂城でしかない
壊れかけた封印に触れないように、漏れだしたフェイトの魔力を引っ張りだす
「フェイトはん……あんさん、難儀な運命背負っとりますなぁ……」
呟きに応えはない


