「……アレが……誰の手によって作られたかわかっただけで十分ですよ」
ニコリとアンジーは笑った
「いい子だ、ありがとう」
そういって立ち上がり、アンジーは去っていた
ベステモーナは影で鼓動を高鳴らせていた
嫌な予感で胸がいっぱいだ
(…今の話は何……?)
空の賢者、封じられた魔力………狙われている
思考が追い付かない
確かにフェイトに関する話だったのか疑いたくなる
しかし、頭のどこかでソレがおかしい事ではないと告げている
フェイトの異常な感の良さを自分は不思議に思ってはいなかったか?
まだ分からない彼の秘密が、それを解き明かす鍵だとベステモーナは考えた
まだ、まとまらない頭でベステモーナはフラフラと歩きだした
その後に、一人残されたウル・ルウはポツリと呟いた
「でも……あの魔法具……もう壊れかけてたなぁ」
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意思の灯らない瞳はやや伏せられ、どこともしれない宙を見ていた
フェイトは今、気を失っているが黎明は気にせずに術を掛け続けている
しかし、フェイトを見つめる瞳には哀愁が漂っていた
「ほんまに……よう似てはるな」
クラリス・アレイスターが黎明に依頼したのは『フェイト・クロウリーに魔法の使い方、及び時空間魔法を教える』という事だった
わざわざ生徒を集めて『抽選』を行ったのは黎明が納得いかなかったからだ
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「時空間魔法をなめたらあかんで?」
お茶を飲みながら、クラリスはおっとりと微笑む
「なめてなどいませんよ?」
ため息をついて黎明はクラリスを見た


