フェイトはキョトンとしている
特別講義を始めた黎明に胡坐をかいて座れと言われた

それだけならまだしも、フェイトの額には札が張られていた


「……これは?」

「呪い(まじない)の札。日本風の魔法術式やな」


サラサラと毛質の筆で黎明は自分の左手にも何事が書き込んでいく


「わての見立てでは君は弱くないで。勉学はともかく、内在魔力が学年最下位ゆうんは信じられへんな」


フェイトが思わず顔を上げれば、軽く動くなと制される


「君は力の使い方が分からへんだけやな。それさえ分かれば、時空間魔法を身に付けられる素質あるで?」


黎明はニッと笑い、フェイトの向かいに腰を下ろした
呪いを書いた左手の中指と人差し指を突き出しフェイトの額に添えた


「わてが魔力の使い方教えたる」



フェイトに張られた札が軋んだ
額から全身に熱い何かが走り抜ける


ふと、気が遠くなる


*******



ウル・ルウを見つめるアンジーの瞳に冷たい色が映る
それを察してウル・ルウは笑みを消した


「さすが魔法具に通じる一族の子だ。まだ3年生なのによく勉強してるね」

「………」

「彼はとても特殊な生まれなんだ。それはさすがに教えられないけれど、彼の本当の力を知られると狙われやすいから。一部の者にね」


ウル・ルウは長い耳をしょげたように揺らしてため息をつく


「……これ以上聞くと、僕の方が危ないんですね……」


ふう、ともう一つ息を吐いてウル・ルウはつまらなさそうにした


「分かりました。彼らには何も言いません……」