「……あの」

「なに?質問あったら何でもいいや」


気になっていた事をフェイトは思い切って聞いてみた


「黎明…先生は、人間なんですよね?」


フェイトは人を最初に見るとき、変なくせがついてしまった
まず、身体に何かないか探してしまう


何かとは、羽や尻尾、尖った耳やあり得ない髪や瞳の色だった

一見、黎明はごく普通の人間に見える
珍しい着物を着てはいるが耳も尖っていないし、漆黒の髪と瞳も日本人のものだと思った


黎明は一つ瞬いて苦笑する


「おしいな。半分当りや」

「……半分?」

「そう」


薄く笑った黎明の姿が次の瞬間、揺らいだ

フェイトは驚きで目を見開く


「わては半妖、こちらで言うハーフエルフと同じような存在なんや」


漆黒の長髪は解けて白銀に変わっていく
そして、頭の上にきつね色の耳が現れる

先程までフェイトと同じ位置にあった耳は消失していた


いたずらっ子のように黎明はクルリと一回りしてみせる


「わては人間と天狐(てんこ)のハーフや」


ポカンと口をあけたフェイトににこりと笑って見せた



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ベステモーナは走っていた


武術科を離れてある人のもとへ
目的の人物がちょうどアパートから出てきて声をあげようとしたが、その前に違う人影が現れる


「アンジェリーナ先生?………ウル・ルウ先輩と」


ベスが訪ねて来たウル・ルウにアンジェリーナは何事が呟いて、人気のない路地に連れていく

不審に思ったベスは気配を忍ばせて近づく



「………貴方は分かったのね」


苦い表情で言ったアンジェリーナは疲労の色が濃い
たいして、ウル・ルウは眠たそうな瞳をトロンとさせて呟く


ベスは声が聞き取れる位置で息を殺した