フェイトは苦く笑った
「あの時は大変だったんだぞ、変な洞窟に飛ばされて……」
言って、気付けばリーバは珍しく顔色を変えていた
しかし、この場の空気は凍てつくほど冷たくなっていく
「ほぉー……フェイトはん、リーバに飛ばされたんや?魔法でなぁ」
先程と変わらず人の良さそうな笑顔で黎明は言ったが、気温は2、3度下がりそうな雰囲気を醸しだしていた
リーバはそれに慌てふためく
「やっ、やだなぁ…お師匠。違いますよぉ……」
「何がちがうん?」
「だから、それは……その」
ニコリ、と絶対零度のスマイルで黎明は指をパチンと鳴らした
「人に向けて使こうたらあきまへんて、わて言いましたよなぁ。お仕置きどす」
ヒッ!
と、短く悲鳴を上げてリーバは消えた
消えたというか、おそらく消されたのだ
「さて、フェイトはん。さっそく講義始めましょか」
「………はい」
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異次元ではなく、フェイトがいた人間世界の日本にも魔法使いは存在する
古くは『陰陽師』といわれ魑魅魍魎を払うことを生業としていた
主に『鬼』を敵として払う
その鬼とはこちらでデスイーターと呼ばれていた
「………日本にも魔法があったんですね」
「呼び方はちゃいますけどな」
フェイトはチラリと辺りを見渡す
見慣れない木々に草花
さらさらと音をたてて流れ落ちる小さな滝
(……ここはどこだ!?)
黎明は場所を移そうと言って、手を合わせた
その瞬間にフェイトの見る景色は一変した
黎明が言うには、ここは魔法で作った異空間なのだそうだ
日本の風景を再現している