フェイトは苦く笑った


「あの時は大変だったんだぞ、変な洞窟に飛ばされて……」


言って、気付けばリーバは珍しく顔色を変えていた
しかし、この場の空気は凍てつくほど冷たくなっていく


「ほぉー……フェイトはん、リーバに飛ばされたんや?魔法でなぁ」


先程と変わらず人の良さそうな笑顔で黎明は言ったが、気温は2、3度下がりそうな雰囲気を醸しだしていた
リーバはそれに慌てふためく


「やっ、やだなぁ…お師匠。違いますよぉ……」

「何がちがうん?」

「だから、それは……その」


ニコリ、と絶対零度のスマイルで黎明は指をパチンと鳴らした


「人に向けて使こうたらあきまへんて、わて言いましたよなぁ。お仕置きどす」


ヒッ!
と、短く悲鳴を上げてリーバは消えた
消えたというか、おそらく消されたのだ


「さて、フェイトはん。さっそく講義始めましょか」


「………はい」



********



異次元ではなく、フェイトがいた人間世界の日本にも魔法使いは存在する

古くは『陰陽師』といわれ魑魅魍魎を払うことを生業としていた


主に『鬼』を敵として払う
その鬼とはこちらでデスイーターと呼ばれていた



「………日本にも魔法があったんですね」

「呼び方はちゃいますけどな」


フェイトはチラリと辺りを見渡す
見慣れない木々に草花
さらさらと音をたてて流れ落ちる小さな滝


(……ここはどこだ!?)


黎明は場所を移そうと言って、手を合わせた
その瞬間にフェイトの見る景色は一変した

黎明が言うには、ここは魔法で作った異空間なのだそうだ
日本の風景を再現している