「貴方達は何を恐れているのです?」
拗ねたようなフェイトの顔をベスは思い出す
そして、裂けた手のひらのことを
「今更避けて、何がしたかったのかしら?血が怖いのなら、もうそうならないようにすれば良いだけのことです」
「……簡単に言ってくれるな」
ブラッドの苦い呟きにもベスはため息混じりに言った
「そうね、私は血を欲する衝動はありませんから。でも気付いているかもしれませんが、リーバは変わりなくフェイトに接していますよ」
それだけ言ってベスは去ってしまった
しばらく座ったまま沈黙していたが、ディンがポツリと言った
「フェイトは本当のこと知ったらどう思うかな?」
「……今まで通りには俺たちと一緒にいれないのじゃないか」
「だよねー……」
渇いた笑いをディンは零す
真っすぐに見つめて来る金色の瞳
くだらない雑談をするわずかな時間
屈託のない笑顔は友人に向けられるものだ
一番フェイトと接していたディンは何を考えているだろう
ブラッドは横目でディンをうかがったが、その感情は読めなかった
ただ、紅い瞳はどこか遠くを見据えている
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「イヤー、ほんまに幻想的な風景やなぁ」
「はぁ……」
フェイトは気持ちの良い風の吹く高台に連れて来られていた
クラリス・アレイスターとは旧知の仲らしいが、メディアに来たのは初めてということだった
聞き慣れないなまりに苦戦しながらも眺めの良い場所を案内した
「なんや、元気ないな。どないしてん?」
「いえ、別に」
曖昧に苦笑いして、よく分からない特別授業など受けたくないとは言えなかった
フェイトは内心ため息をつく
ただでさえ………
「ただでさえ、基礎魔法も使えへんのにようわからん講義は退屈でっか?」


