「貴方達は何を恐れているのです?」


拗ねたようなフェイトの顔をベスは思い出す
そして、裂けた手のひらのことを


「今更避けて、何がしたかったのかしら?血が怖いのなら、もうそうならないようにすれば良いだけのことです」

「……簡単に言ってくれるな」


ブラッドの苦い呟きにもベスはため息混じりに言った


「そうね、私は血を欲する衝動はありませんから。でも気付いているかもしれませんが、リーバは変わりなくフェイトに接していますよ」


それだけ言ってベスは去ってしまった


しばらく座ったまま沈黙していたが、ディンがポツリと言った


「フェイトは本当のこと知ったらどう思うかな?」

「……今まで通りには俺たちと一緒にいれないのじゃないか」

「だよねー……」


渇いた笑いをディンは零す


真っすぐに見つめて来る金色の瞳
くだらない雑談をするわずかな時間
屈託のない笑顔は友人に向けられるものだ


一番フェイトと接していたディンは何を考えているだろう

ブラッドは横目でディンをうかがったが、その感情は読めなかった

ただ、紅い瞳はどこか遠くを見据えている



*********



「イヤー、ほんまに幻想的な風景やなぁ」

「はぁ……」


フェイトは気持ちの良い風の吹く高台に連れて来られていた
クラリス・アレイスターとは旧知の仲らしいが、メディアに来たのは初めてということだった


聞き慣れないなまりに苦戦しながらも眺めの良い場所を案内した


「なんや、元気ないな。どないしてん?」

「いえ、別に」


曖昧に苦笑いして、よく分からない特別授業など受けたくないとは言えなかった


フェイトは内心ため息をつく
ただでさえ………


「ただでさえ、基礎魔法も使えへんのにようわからん講義は退屈でっか?」