ベステモーナは珍しく、武術科の方へ足を運んでいた

武器と武器が交わり弾ける音を聞きながら目的の人物を捜し当てた


「ディン君、ブラッド君」


木陰で休憩していた2人は訝しげにベステモーナを見た
後で話があるから武術科の方へ行くとは言われていたが、何を話したいのかは見当がつかない


「どうしたのさベス。急に話したいだなんて」


木陰に座ったままの2人に向かって、ベスは腰に手を添えて仁王立ちする


「貴方たち、フェイトに惑わされているのでしょう?」


ベスの突然の言葉にブラッドは飲んでいた水を吹き出しむせる
ディンはケラケラと笑った


「突然、何言いだすのさ」


むせるブラッドの背をさすりながらディンが言うと、ベステモーナは真摯な表情で言った


「血のことです」


ディンは笑うのを止め、ブラッドは口を拭って射ぬくようにベスを見上げた


「あれぇ、気付いた?」

「リーバが言っていたではありませんか……本当にそうなのね」


ストンとその場に膝をついてベスはサバティエ兄弟を見据える


「それに聞いたことがあったので。バンパイアは人間の血を好んで飲みますが、成人するまでは人間への吸血行為が禁止されていると」


ベスがいえば、ディンは特に興味もなさげに頷く


「確かにそうだね」

「……別に俺たちはアイツを襲ったりしない」


堅い声でブラッドが言えばベステモーナは肩を竦めて呆れた


「そんなことは見れば分かります」

「じゃあ何が言いたいわけ?」


ディンの瞳に映る色が読めない
しかし、ここで引き下がる訳にはいかなかった