静粛に、と厳しい号令が響き生徒達は正面の舞台に集中した
「今日の集会は他でもない、特別講師を我が学園にお招きした」
ゴホンと気まずそうに咳払いをしたその先生は、実に微妙な表情で特別講師を紹介した
「日本からお越し頂いた、レイメイ・アベ様だ」
日本、と聞いてフェイトは驚く
が、それは早かった
ドン、と太鼓が鳴った
それは軽快なリズムを刻み、合わせたように辺りが暗くなる
一際大きな太鼓が鳴ると、幾つもの鬼火が灯された
騒めく生徒達をよそに聞き慣れない、なまりのある声が高らかに響いた
「ぼんに穣ちゃん、ヤオヨロズの皆々様、初めまして」
鬼火は宙を飛び交い、やがて舞台の中央に集まった
そして、空間が捻曲がる
捻れたそこからストンと白い影が舞い降りた
「わては安部の黎明。日本の陰陽師、こちらでいう魔法使いどす」
薄い紗の衣がフワリと舞う
フェイトは着物だろうか、としか分からなかったが黎明が着るそれは平安時代に男性が着用した着物だ
白い上着に濃紺の袴
草履を履いた足が地に降りた
フェイトはポカンと見上げた
よく通る声からして男性であることはわかるが、その面は女性と見紛うほど線が細い
くせのない艶やかな黒髪を背中で束ね、目の淵には朱色の紅が走っている
しかし、何よりフェイトが驚いたのはそこではなかった
(何だろう……この膨れ上がる不安は………)


