現代的な街並み
オフィスビルの立ち並ぶ通りのカフェで珈琲を飲んでいた初老の男性は、カップを持つ手を不意にビクリと動かした


………パキン


「…………フェイト?」


初老といえど、その眼差しは光を失ってはいない
カフェのガラス窓から見える空の先
更にその果てしない彼方を彼は見据えて、誰にともなく呟いた


「クラリス……もう、止めることは出来ないんだな」


苦い思いを込めてカップを持つ手に力をこめる

2つ目の音

1つ、音がしたのは1ヶ月程前
だが、あれは後どれほど持つだろう?


「アウロラ……お前はも限界なのか?」



どれだけ空を見上げてもこの世界の空には彼の息子はいない

しかし、完全に隔絶しているわけではない

だから、無駄だとわかっていても遠いこの場所から願わずにはいられない



「どうか……あの子をお守りください………シエル様」