その手で溶かして


私は遠藤君から時間と場所を聞き、急いで家へと向かった。



夕食の時間まで、後10分。



遠藤君と話していたせいで、すっかりと家のことなど忘れていた。



私が今まで家のことを忘れたことなど、ただの一度だってない。



どこにいたって、誰といたって、ママの視線が私を捕えて離さない。



それなのに……


今日はどうして忘れてしまったのだろう。



「ただいま。」



ママの機嫌が良いことを願うしかない。