「真雪。待って。」
私が悩んだ末に断念したことを、遠藤君はいとも簡単にやり遂げてしまう。
呼び止められた私は足を止め、振り返った。
「呼び止めてごめん。言おうかどうか迷ったんだけど……」
「えぇ。どうしたの?」
「今週の土曜日なんだけど、暇だったら付き合ってくれない?」
「暇だけど、何に付き合ったらいいの?」
足下に視線を落としたままの遠藤君は、なかなか次の言葉を続けようとしない。
日が落ちると心地よい風が通り抜けるのは、この土地特有のこと。
その風を体全身で感じながら、私は遠藤君の言葉を待った。


