それなのに
「ありがとう。」
なんて言われてしまうと、返す言葉が見つからない。
「戻る場所がない俺には、この生活を続けるしかなかったんだよ。ただ、それだけ……真雪に連絡が出来なかったのは、笑われそうな気がして怖かったんだ。」
「私が?」
「真雪は自分のことをよくわかってる。だから、俺の馬鹿げた行動と考えを知ったら、軽蔑されそうで……怖かった。」
「そんなことないわよ。私は自分のことをよくわかってるつもりはないしね。」
凛としていた遠藤君は、守られた環境が作り出していたのかもしれない。
すべてを無くした今、その面影は感じられない。


