その手で溶かして


「遅くなって申し訳ありません。改めまして、遠藤です。」



玄関先で頭を下げる遠藤君にママは笑顔で出迎えた。



「そんなにかしこまらなくてもいいわよ。真雪だって、遠藤君だって年頃だもの、色々とあるわよね。」



もう何年も私には向けられていないママの笑顔。



「これからも真雪と仲良くしてあげてね。」


と品のある口調を崩すことのないママを見ていると、嬉しくなったのを覚えている。



遠藤君が帰った後に、1人で夕食を済ます私に、ママは根掘り葉掘りと遠藤君のことを聞いていた。



開業医の一人息子。



ママの好きそうなフレーズではあるが、ここまで歓迎ムードになることは予想していなかった。



でも、ママがご機嫌ならそれでいい。



ママが喜んでくれるなら、私も嬉しい。