その手で溶かして


「もしもし?真雪?どうした?」



何コール目だったかわからないけれど、割とすぐに電話に出てくれた遠藤君にホッとする。



気まずい雰囲気で今日は別れたのだと、今になって思い出した私は言葉に迷い、無言になってしまう。



「おい。真雪?どうした?大丈夫か?」



別れ際に感じた雰囲気など微塵も感じさせない遠藤君の声に私はやっと口を開く。



「急にごめんなさい。何も考えないでかけてしまって……」



私は遠藤君に電話をして何を言うつもりだったのだろう?



家に帰りたくないなんて子供のようなことを言うつもりで電話をしたのだろうか?



「何かあったのか?」



何かあったと言えばそうだけど……



ウミとのことを遠藤君に話すつもりはない。



「何もないの。ただ……」



「ただ?」



「考え事をしていて、家に帰るのが遅くなってしまって……門限過ぎてしまったわ。」



「それで帰りにくいわけか。」



「そんなところ。」



こんなことを遠藤君に言っている自分が恥ずかしくなってしまう。