その手で溶かして


ウミの家を出たけれど、自分の家に帰る気になれない私は学校への道を歩きだす。




もう、夕食の時間は過ぎているというのに、ママへの言い訳が思いつかない。



それどころか、こんな状態じゃ「ただいま」さえ言えない気がする。



遠藤君といつも別れる道まで来た私は携帯電話を取り出した。



こういうときに携帯電話という物は役立つのだな。


と始めて携帯の便利さを痛感した私は遠藤君に電話をかける。



家に帰りたくないときに電話をするのは“友達”なのかもしれない。



でも、私には友達と呼べる人なんていないし、今日1日でその定義さえわからなくなってしまった。



思いつくのは遠藤君くらい……


というか、私のアドレスに家族以外は遠藤君しか登録されていないから。