その手で溶かして


私は一応靴を脱いでから立ち上がり、ウミの開けたドアへと足を進めた。



「もうユキの嫌がることはしないから。」



「わかった。」



「じゃあな。」



そう言ってこちらを見つめるウミの顔が見れない。



“じゃあな”なんてただの挨拶にすぎないのに、私の胸は音を鳴らしているかのように締め付けられる。



ギューっと何かが軋むような音が心音と共に私の脳内に響く。



ウミの言うとおり、私は泣かない。



でも、泣かないっていうのは少しだけ違うかな。



涙が流れてくれないの。



ウミの表情に……

ウミの言葉に……

ウミの匂いに……



体全部が悲鳴を上げているのに、私の涙は流れてくれない。



でもね、ウミ。



今、私、苦しいよ。