その手で溶かして


昨日のことがあったせいか、今日は目覚めが悪かった。



あの光景を見た次の日が、いつもこうなわけではない。



ただ、昨日はパパに少しだけ、望んでしまった。



望んでいるのに、その事を口に出せないもどかしさが私の眠りを浅くしたのだろう。



怠い体に鞭を打ち、学校へ行く身支度をした。



そして、いつものようにリビングへ向かう。



すると、そこにはいつもと変わらない穏やかな朝の空気が流れていた。



「おはよう。」



「おはよう。」



パパはコーヒーを片手に新聞を読んでいるし、ママは私に向かって笑顔を振りまいている。



昨日の出来事がすべて夢だったんじゃないかって思えるほど、絵に描いたような朝の風景。