その手で溶かして


安定している生活を自ら捨てようとしている遠藤君のほうがよっぽど強く見えるけど。



「真雪と話したら決心がついた。俺は自分の思う通りに生きてみるよ。」



ぱたんと資料を閉じると、いつもの凛とした遠藤君が戻ってきた。



「私も私の思う通りに生きるわ。」



「ありがとう。真雪。」



この時、本当は少し怖かった。



私の言葉が遠藤君の背中を押してしまったのだとしたら……



私は誰かの人生が自分によって左右されることを恐れていた。



私にはそんな大きな責任は負えない。



この背中にはもういっぱいに背負わなければいけないものがあるから。