ママだって、私と同じようにこの場所が好きなはず。



この場所に家を建てることを決めたのはママだと、昔聞いたことがある。



専業主婦のママが住みやすく、安心して子育てのできる環境を選んだとパパが言っていた。



この家を建てる計画を始めたのは、私がママのお腹にいた頃の話。



私のためにママはこの土地を選んだ。



住み慣れた土地を捨て、私のために新たな場所で私を育ててくれたママ。



そんなママが、この土地とこの家……



そして、私を捨てるはずなどないと、私は繰り返し自分に言い聞かせる。



そうでもしていないと、不安に押しつぶされ、隣でブランコをこぐ、ウミに助けを求めてしまいそうだった。



「まだここにいるのか?」


「そろそろ戻るわ。」



「そうか。」




本当はまだここにいたいけれど、ウミにとって私がいるということは迷惑なことなのかもしれないし、迷惑だと思われてまでいたいとは思えないから。