無口で不器用な年下くん。



「…多分、莉子の悩みは恋──」


「今年は誰が入るか楽しみだなぁ♪」


「…って聞いてないし」



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昼の悩みも忘れて、放課後、余裕を持って体育館へと向かう。


今日は大切な日だから遅刻するわけにはいかない。


「あ~!桃センパ~イ!」


体育館に続く長い廊下を歩いていると、後ろから私を呼ぶ声が響く。


後ろを振り向くと、手を大きく私に振ってる森下君が居た。


数日前から私の事を“桃センパイ”と呼んでいる。それが一年生から言われている呼び名。


坂井君は普通に、センパイや桃山センパイだけどね。


ジャージ姿の森下君は笑顔で私に走り寄る。