無口で不器用な年下くん。



「大丈夫だよ~」


このくらいの暗さなら慣れている。


私はピースを拓哉に向けながら言う。


すると、拓哉のチョップが頭に飛んできた。


旋毛(ツムジ)らへんに激痛が走る。


「ちょ、痛いし…っ!」


「馬鹿、俺が大丈夫じゃねぇんだよ」


「…何で?」


「莉子が心ぱ──…」


拓哉が何か言いかけた所で、後半終了のホイッスルが体育館に鳴り響いた。


「?私は大丈夫だから~」


またピースを拓哉に向けて、自分の定位置へ戻った。


拓哉の詰まる声が聞こえたのを無視して。