「坂井!練習入れ!」 拓哉がそう坂井君に向かって叫ぶ。 坂井君は小さく返事をし、練習の輪の中へ入ろうと走ったとき。 一瞬、私の方を見て── 「……お尻と額、大丈夫でしたか」 と、静かに呟き、行ってしまった。 私は数秒、ポカンとしてしまう。 お尻と額…? 坂井君が私に残した言葉を頭の中で巡っていると、さっきの光景が浮かんできた。 体育館に入る前に、誰かにぶつかってしまい床にお尻を打ったあの光景を─。