詩野が視線をゆっくりと地面から僕に移した。
「私の名前も、覚えてたんだ」
「え…あ、まぁ一応」
自分でも動揺してるのがわかった。
今まで詩野を名前で呼んだことなんてなかったのに、
つい呼んでしまった。
いきなり名前で呼ぶなんて、なんだか恥ずかしい。
とにかく沈黙になるのだけは避けようと、
僕は次の言葉を必死に探した。
「いや、その、あの〜苗字は?…なんだっけ?」
「いいわよ、詩野で」
そう言って詩野は微笑んだ。
「そ、そっか」
「うん」
僕の努力は結局数秒しかもたず、
そのあとしばらく沈黙が続いた。
ふと後ろを振り返ると、公園を彩る鮮やかな蛍光灯が、
噴水の水しぶきに反射して、淡い虹色の水滴を作っていた。
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