『…軌!…一軌!ちょっと一軌!』
ハッとした。
『今寝てたでしょ!』
『ごめんごめん。色々思い出してて…。でもちゃんと聴いてたよ。素敵な歌をありがとう』
僕は拍手を送った。
詩野は少しムッとした表情をしていたが、
すぐにいつもの笑顔を見せてくれた。
『それじゃあ私、行くね』
『あ、あぁ…気をつけて』
『絶対夢叶えてみせるんだから、見ててよね!』
『もちろん。またいつでも遊びに来なよ』
『ありがとう。でも、次逢う時はプロとしてデビューしてから。そしたら、その時は…私の歌を一軌に一番最初に聴かせてあげる』
『待ってる。約束だよ』
僕らは指キリをした。
強く結ばれた指に遠い未来への願いを込めて…
『詩野なら…必ずなれる』
『ありがとう。頑張る。それじゃ…』
『あっ、ちょっと待って!』
『なぁに?』
やっぱり言えない。
勇気が出なかった。
『いや、その……応援してる!詩野がここに戻ってくるまで…ずっと待ってるから』
そして、詩野は最後に、
少し照れながらも、本当に嬉しそうに笑ったんだ。
……
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