『将来はミュージシャンになりたいんだ!』
『へぇ、かっこいいじゃん』
『でしょ?私の歌で世界中の人を幸せにしたいの!』
そう言って詩野は、嬉しそうに背中にしょっていた大きな荷物をおろし、ギターを取り出す。
『えー、タイトルはまだないですが聴いて下さい』
僕は詩野の前に座り込み、その曲に聴き入った。
歌声がすごく素直で、どこか吸い込まれるような…
そんな感じだった。
後ろで噴き上がる噴水が、ギターの音色と重なって、
真夏の都会に涼しげな風を立てる。
『すごいじゃん!詩野ならきっと世界中の人を幸せにできるよ』
お世辞なんかじゃない。
本当にそう思った。
『本当?ありがとう!』
詩野がニッコリと笑う。
それからは、毎日詩野の歌を聴いた。
たった三日間だったけど、すごく楽しくて、すごく愛しくて…
また逢えなくなると思うと、そこから逃げ出したくなるほど胸が締め付けられた。
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