「目的も果たしたし、私、もう行かないと…」
行くって…
どこに……?
「待ってよ。詩野…」
「ありがとう…。今までたくさんお世話になりました」
詩野は軽くお辞儀をして、僕に背を向けた。
「待って!本当にもう終わりなの?夢は諦めるの?ねぇ詩野!また一緒にここで練習しようよ!」
「………」
「ダメなんだ!詩野の歌じゃないと!大好きな君の歌じゃないと!」
「もうやめて……。これ以上優しい言葉はかけないで…」
「待ってよ!詩野!…詩野!」
「ごめんね…ごめんね…」
「あの日みたいに…また歌ってよ…」
「さよなら…」
それが詩野の最後の言葉だった。
徐々に遠ざかる詩野の足音が、荒んだ僕の心にさらに穴をあける。
僕は膝から崩れ落ち、大切な人一人すら、
引き止められない自分の力の無さを恨んだ。
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