「ごめんね…。私、さっきから泣いてばっかりだね」
「謝ることない。今までたくさん我慢してきたんだ。だから、今日はいっぱい泣いていいんだよ?」
「うん…。ありがとう」
「辛かったよね。詩野はいつも一人で抱え込んでた…」
「違うの。その…嬉しくて。各務くんの気持ちが…」
「嘘なんかじゃない」
「ずるいよ…こんな時に……」
詩野は、その覚束ない足でゆっくりと立ち上がった。
「実はね…今日ここに来たのはこれを渡そうと思って」
そう言って、詩野は鞄の中から丁度掌くらいの大きさの箱を僕に渡した。
「なに?これ」
「今日誕生日でしょ?おめでとう。私からの気持ち」
今日初めて詩野が笑った。
その悲しみとは裏腹に、真っ赤な目と、鼻をまだ少し啜りながら…。
「ありがとう…。知ってたんだ」
「うん。大輔と浩二くんが教えてくれた」
それは詩野から僕への最後の贈り物だったのかもしれない。
歌ではなく、形ある物に精一杯の想いを込めた……
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