どうすれば、詩野はあの日のように笑ってくれる?
どうすれば、あの時のように歌ってくれる?
思いつくことはひとつしかなかった。
深い闇に迷い込んだ詩野に、手を差しのべてくれる唯一の光…
「ねぇ詩野…またここで歌ってくれるよね?」
「それは……」
手で涙を払い、呼吸を落ち着けると、詩野は続けた。
「もうここにはいれない…」
「そんな…どうして?」
「歌えないのに、私がここにいる意味なんてないよ…」
「そんなことない!また歌える日が来るまで、一緒に頑張ろうよ」
「知ってるでしょ?私の病気?」
「それは…」
「ううん。いいの。私に気を使って知らないフリしてた。各務くんは優しいから…。だからわかるでしょ?今は何もできないの。もしかしたらこれからだって……」
詩野の唇が再び震える。
唯一…
詩野を救えるとしたらただひとつ……
「方法はないの?」
「とにかくもうここには……」
「ねぇ詩野!諦めちゃだめだよ!」
「ごめんね。ごめんね…」
詩野の目からまた一粒涙が落ちた。
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