「神様は、挑戦することすら許してくれないの?せめて…最後まで歌いたかった…。私、悔しい…。悔しいよ……」
詩野の髪が風になびく。
その隙間から落ちてくる無数の涙が地面を濡らした。
それは、いつも強い詩野が初めて見せる涙だった。
「詩野…泣かないで…」
詩野の想い全てを受け止めたくて、
とめどなく頬を伝う涙を、僕はやさしく拭いてあげた。
「大丈夫…。これからだよ。一緒に頑張ろう?」
「うん…。ありがとう。でも……」
「でも?」
「もう、こんな思いしたくないよ…」
「………」
「歌なんて好きにならなければよかった…」
そんな…
それじゃあ…夢を諦めるの?
もう歌わないってこと?
もう詩野の歌は聴けなくなるの?
そんなの嫌だ……
悲しみに染まる僕の心に、詩野の泣き声だけが虚しく響いた。
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