ここは、詩野にとっても僕にとっても思い出の場所なんだ。
ここに座れば、いつも詩野の歌が聞こえてくる。
耳を済ませば、柔かな音色が僕の心を優しく包んだ。
「ねぇ各務くん…」
僕は目を開いて、詩野に視線を向けた。
「ごめんね…あんなに一生懸命になってくれたのに」
………。
「私、夢叶えられなかったね…」
「そんな…。詩野は頑張ったじゃないか」
「……私、頑張れてたかな?」
「うん。誰よりも」
「ありがとう。でもね、それはいつもみんなが支えてくれたから。各務くんはずっと傍にいてくれた…」
「………」
「だから…約束果たせなくて、私どうしたらいいのかわからなくなっちゃって…ごめんね」
「どうして謝るの?すごく感謝してる。あんなに素敵な歌をいつも聴かせてくれたんだ」
「でも…」
「ありがとう詩野」
「お礼なんて言われたくない…。もう少しだったのに…。夢はそこまで来てたのに…。ねぇどうして?どうして私なの?」
詩野がずっと一人で背負ってきた想い。
弱みを隠すことで守ってきた想いが、今その芯を失い、脆く崩れてゆく。
僕はかけてやる言葉が見つからなかった。
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