冷たい風に木々が揺れる。
身体を丸め、急いで家に向かう人たちの足音が、
僕らの間を何度も通り抜け、少しずつ遠ざかっていった。
「この前はありがとう」
ほんのり赤く染まった鼻をすすりながら、詩野が言った。
「この前?」
「うん。私のために、怒ってくれて…」
「あっ…いや…」
それより…
「大丈夫?身体は?」
「…うん。安静にしてれば問題ないから」
「風邪引くよ?今日寒いから」
「でも、各務くんに呼ばれた気がして…。絶対ここにいると思ったんだ」
「そっか…」
なんだかうまく喋れない。
まるで時間が巻き戻ったかのような…
詩野と初めて話した時もこんな感じだった。
「とりあえず座ろうか」
僕は一番近くにあるベンチへと歩き出した。
「待って」
……?
「私、あそこがいい」
そう言って詩野が指差したのは、
夢を追いかけ、いつも歌ってきた噴水だった。
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